RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、人間が行なっている業務をロボットで自動化をすることができるサービスです。日本では2018年から2019年にかなりホットワードとなり、多くの企業がこぞって導入し始めました。RPAの市場は2023年には1500億円規模になると予想されています。近年ではクラウド型のRPAサービスが普及しより低コストで利用できるようになりました。今回は特徴や活用事例について詳しく紹介します。
RPAを導入したという会社が多くなっているけど、どういったサービスなんだろう?
RPAはロボットで業務自動化を行うことができるサービスだね!
RPAとは何か?
RPAは業務を自動化するロボットを作れるサービス
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、ロボットを活用することで業務を自動化することを目的としたサービスです。Googleトレンドを見てみると、日本では2017年ごろからRPAという言葉が広まりだし、2018年から2019年にピークを迎えて、最近ではやや落ち着き傾向になっています。
▼Googleトレンドで「RPA」の検索傾向
RPAの市場規模は1500億円越え
RPAの市場は流行り始めた2016年ごろは85億円規模でしたが、2019年には530億円まで伸び、2023年には1520億円まで拡大することが見込まれています。ここ数年でRPAのサービスも定着化がされ、より使いやすいクラウド型のサービスの登場により大手企業だけでなく、中小企業でも広く普及しはじめました。
もともとは大手企業向けというツールの印象が強かったのですが、今は低コストでかなり操作性も良くなったため、導入を検討している企業も増えている印象です。
RPAの特徴
エンジニアでなくても簡単にロボットを作成することが可能
RPAはシステム構築が不要で現場のビジネスマンが簡単にロボットを作成して、業務を自動化することができるツールです。通常であればエンジニアでしか作業ができない領域ですが、今ではPCの画面を操作するように、ロボットを簡単に作成することができます。
ツールを跨いだ幅広い対応が可能
また、RPAはExcelのマクロなどとは異なり、ログインが必要なSFAやCRMツールから資料をダウンロードして、Excelやスプレッドシートへ貼り付けるなど、ツールを横断した自動化を行うことが可能です。通常であれば、それぞれのツール通しでAPI連携などのシステム連携を行う必要がありますが、RPAの場合は、人が操作しているようにPCの操作をロボットで代行することができるため、エンジニアでなくてもツールを横断した自動化を実施できることが特徴です。
RPAが必要な理由
人手不足の影響で必要
RPAが求められる理由の1つ目が、人手不足です。企業の売上が好調でも人手が足りなくて業務が逼迫して、社員が疲弊してしまうことが少なくなりません。すぐに採用を行なったとしても教育コストがかかり、その現場担当者の工数削減をするまでは時間がかかります。RPAの場合は作業担当者の作業をそのままロボットに登録することで自動化を行えるため、いわば”即戦力”として役にたつことができます。
労働環境の改善として必要
普段の業務の中には単純作業の割合が多いという部署やチームも少なくなりません。企画力などが問われることなく、繰り返しの作業となるため、人的なミスも発生しやすい上に、ストレスが溜まりやすい環境です。単純作業を繰り返していると対応の柔軟性が欠けてしまうだけでなく、早期離職のリスクが高まります。コールセンターでは離職率が50%以上と話題になっていますが、単純作業の業務でも同じくらいのリスクがあります。
RPAを導入することで、限りなく単純作業はロボットで自動化をすることができるため、現場担当者はより「人間でしか対応ができない領域」の業務へシフトすることができます。会社としても社員としても単純作業をロボットに任せてしまう方が労働環境として大きく改善することができます。
RPAはどのような仕組みで動いているの?
RPAは作成されたフローの通りに動く
RPAは人間が行なっている作業の1つ1つを具体的な作業として登録することで、業務全体を自動化することができます。例えば「あるツールへログインをしてから資料をダウンロードし、それをスプレッドシートへ貼り付けをしたい」という場合は下記のような作業に分割することができます。
<工数への分割例>
- 資料が保存されているツールのURLを検索する
- ログインIDとパスワードを入力してログインする
- 資料を見つけて、「ダウンロード」ボタンを押す
- ダウンロードした資料をスプレッドシートへ貼り付けをする
上記の1つ1つの作業をRPAで登録を行なっていくことができます。全ての一連の操作を登録することで、人間が行う作業をボタン1つクリックするだけで、自動で実行することができます。また、実行の予約機能などもあるため、夜中に実行して朝には作業が完成している状態にしておくことなども可能です。
画面を操作するだけでロボットが作成できてしまうRPAもある
通常は上記のようなフロー図を作成して、1つ1つに対して作業を割り当てるという仕様が多いのですが、より感覚的に利用ができるクラウド型のRPAツールも登場しています。いつもの作業を行うように画面を操作しながら、クリックやテキストの入力、ダウンロードボタンのクリックなどをすることができ、画面を操作しているだけで簡単にRPAを作成することができてしまいます。
RPAが得意な領域
RPAが得意な領域は明確で、テンプレート化された定型作業を自動化することです。例えば請求書の発行フローや経理処理、毎回同じWebページからコピペしてターゲットリストを作成するなどの単純作業や同じフローの作業を自動化することが得意です。
テンプレート化できる業務の自動化
テンプレート化できる業務ですと次のようなものが当てはまります。毎回時間が掛からなくても、毎日実行しているタスクは簡単に自動化できるものが多いため、短時間であっても月間や部署でのトータル削減時間に直すとかなりインパクトがあることが多いです。
- データのダウンロードやアップロード
- グラフや表の作成
- メール配信
- データのコピー&ペースト
- 交通費の精算
- 請求書データの入力
- ターゲットリストの作成
- 業務レポートの作成
ITシステム未満、Excelのマクロ以上の機能
本格的にサービスとして開始する場合や、会社の基幹システムとして作成する場合はITシステムとして作成〜導入することが多いですが、日常の業務の自動化にはそこまで費用や時間をかけることができません。そうとは言っても、Excelのマクロの機能だけでは限界があります。RPAはそんな中間に位置するサービスで、エンジニアが稼働することはないけど、作業工数が多い業務の自動化を簡単に実現することができます。
RPAとAIの違い
よくRPAとAIは何が違うのか?と混同されている方が多い印象です。ここでAIとRPAの違いについて整理しておきましょう。
AIは頭脳で、RPAは手足の役割
AIは人工知能の略で、人間に変わって物事を判断したり、分析を行なったりする技術です。今は大量のデータがあるまる時代なので、多くの研究が進み、ビジネスとしても活用される機会が増えてきました。AIは知能と言われているように、AI単体では作業や業務をこなすことはできず、計算結果や判断結果を返すことしかできません。
一方でRPAというのはロボットが自動化するので、工場のラインのように決まった作業を自動で行ってくれるような技術です。RPAが独自で何かを判断するということはできませんが、決まった作業を永遠とこなすことができます。
RPAを導入するメリット
RPAを活用することで日常業務を自動化することができますが、結果的にどのようなメリットを得ることができるのでしょうか?RPAを導入することで得られるメリットについていくつかまとめていきます。
- 定型業務の効率化
- 人件費の削減
- 人的なミスの防止
- 24対応による業務品質の向上
- 空いた時間でより重要な業務へ注力
定型業務の効率化
毎回同じような作業を伴う業務はRPAを活用することで自動化をすることができます。全て自動化ができない場合であっても多くの作業はロボットで代行することができますので、効率化を実現することができます。
人件費の削減
作業を効率化することができればそこにかけていた人権費を削減することができます。ロボット単体ではエラーが起きることもありますので、全員分を削減するということはできませんが、それでも多くの人件費を削減することが可能です。
人的なミスの防止
人が作業を行うとどうしてもミスが起きる可能性があります。ロボットの場合は余程のエラーがない限りはミスをすることはないため、作業ミスの防止をすることができます。
24h対応による品質の向上
RPAは決まった時間に実行することができます。夜中に対応しなければいけない作業は深夜にシフトを組み、かつ深料金も支払う必要がありましたが、RPAではそのような費用は発生しません。いつでも決まった時間に実行し続けることができます。
空いたリソースでより重要な業務へ注力
人間の代わりに作業を行なったからと言って全ての仕事が代行できるわけではありません。人間でしかできない仕事もたくさんあります。業務効率化の調査によるとRPAなどを導入した企業は従業員を解雇する割合は少なく、代わりにより人でしかできない業務へ配置転換を行ったという報告も上がっています。人でしかできない作業は難易度が高いですが、会社にとっても従業員にとってもよいチャレンジになります。
RPAの導入に伴うリスク
RPAの導入に伴うリスクは少ないですが、考えられるリスクを洗い出してみました。
最初のうちは都度チューニングをしないと稼働停止することがある
RPAはよくも悪くも決まったフローでしか稼働することはできません。人間だったら、ページがクルクルしているから少し待っておこうと判断することができても、RPAでは、ダウンロードボタンが表示されずにエラーとして稼働がストップしてしまいます。
その場合は何秒間は待つなどの指定をすることで解消されますが、このようなエラーの洗い出しは最初から想定しておくことは困難なため、稼働し始めてからいくつかエラーの対処をする必要があります。
RPAのロボットが管理できなくなる可能性
RPAのロボットは簡単に作成することができるため、多くの部署で利用することができます。導入時にRPAを作成する人を制限しないと、無駄なRPAが溢れ返り、使っているRPAを管理することが大変になります。通常はロボットの数や自動化の工数に応じて課金されるような料金体系のため、無駄なコストを払い続けることになってしまいます。
RPAの導入手順
RPAを導入する際にはどのような手順を踏んだら良いのでしょうか?ここでは一般的な方法としてまとめてみます。
- 自動化したい業務の洗い出し
- RPA各社に相談して自動化できるかどうかを判断する
- テスト的に導入をして、効果の検証を行う
- 費用対効果を試算する
- 本格的な導入に備えて担当者をつける
自動化したい業務の洗い出し
RPAは導入して効果が出るわけではありませんので、自動化したい業務をまずは洗い出す必要があります。どのような業務があるかを洗い出し、それがRPAを活用するべき内容かどうかを判断しましょう。
RPAベンダーに相談をしてみる
洗い出した業務をRPAで自動化することができるかを実際にRPAベンダーへ相談してみましょう。多くはより具体的な工数までわからないとRPAベンダーも具体的なアドバイスができないことが多いです。
テスト導入をしてみる
トライアルのプランがあるベンダーでテスト導入をしてみましょう。テストの結果によって実際に使い勝手や工数削減効果がどのくらいありそうかを把握します。
費用対効果を試算する
テスト導入した結果から、どのくらいの時間を削減することができたか、人件費に直すとどのくらいの効果だったかを試算しましょう。RPAベンダーによってツールの利用費が異なるため、導入した場合に費用対効果があるのかを把握しておくと社内提案の際もスムーズです。
専用の担当者をつける
RPAは導入当初はエラーが発生して、稼働がストップしてしまうことが多いです。都度エラーを確認し、稼働調整をする必要がありますので、最初は専任の担当者をつけておくことをおすすめします。
RPAにこだわる必要はない
RPAの話を多くしてきましたが、なんでもかんでもRPAに固執する必要はありません。ツール導入が先行してしまうと、「ツールを使って何が自動化できるか?」という思考に陥ってしまいます。本来は「この業務を自動化したい」という思考からスタートすべきところが本末転倒です。
自動化したい業務の内容によってはRPAを使わなくてもGoogleスプレッドシートのアドオン機能や各ツールが提供しているAPIでの連携の方がスムーズな場合もあります。業務の目線からスタートすることを忘れないことが大切だと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はRPAについて特徴や仕組み、活用事例についてまとめました。RPAはエンジニア以外でも活用することができるツールで、単純作業であれば簡単にロボットで代行することができます。一方でRPAを導入することが先行してしまうと、RPAで効率化すべきことでない作業もRPAを無理やり使うということが多くなります。RPAはあくまで業務効率化の1つのツールであることを忘れずに、本質から考えるということを徹底していきましょう。
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