8割以上の企業が導入の電子契約とは?仕組みから活用事例まで紹介!

8割以上の企業が導入の電子契約とは?仕組みから活用事例まで紹介!

コロナをきっかけに多くの企業で脱・紙文化が始まりました。2020年10月には東北大学で「オンライン事務化」を宣言し、押印(ハンコ)の原則廃止を行い、年間約8万時間分の作業が削減されました。契約書や見積もり書類などを電子契約で実現する仕組みとはどのようなものなのでしょうか?法律周りから活用事例まで広く紹介します。

契約書を送付するためだけに出社するのって大変だよね。

電子契約のサービスを活用すれば、全てオンラインで簡潔できるよ!

目次

電子契約とは何のこと?

電子契約とは、これまでの紙の契約書に印鑑を捺印して締結する代わりに、電子文書に電子署名をする契約のことです。インターネットが普及したことで、メールやクラウドストレージサービス等で実際に資料を紙で印刷しなくてもやり取りができるようになりました。送付などはPDFで送り、原本を郵送してもらうというスタイルが定着していましたが、すべてをインターネット上で完結させようというニーズ生まれ、電子契約のサービスが登場しました。

日本文書情報マネジメント協会の電子契約委員会によると、電子契約は下記のように定義をしています。

電子的に作成した契約書を、インターネットなどの通信回線を用いて契約の相手方へ開示し、契約内容への合意の意思表示として、契約当事者の電子署名を付与することによる契約の締結を行うもの。

電子契約活用ガイドライン

「企業IT利活用同行調査2021」によると電子契約を導入する企業は年々増加しており、2021年度の調査では67.2%の企業が導入をしており、「準備・検討中」を合わせると84.9%と8割を超える企業が既に導入、もしくは今後導入する予定となっています。

IT-REPORT

電子契約の仕組み

電子契約が成り立つための3つの要素

電子契約には本人証明、非改ざん性の証明、存在証明の3つの要素で成り立っています。

  1. 本人証明→契約の当事者が本人であることの証明
  2. 非改ざん性→電子契約の内容が作成された後で改ざんされていないことの証明
  3. 存在証明→電子契約が作成された日時の証明

これらは電子契約に関連する法律でこの要素を満たすことが必須と定められており、電子契約を提供しているサービスはこの3つの要素を証明できるような仕組みになっています。

電子契約で使われている技術

電子契約では上記の3つの要素を証明するために、3つの技術が活用されています。

  1. 電子署名
  2. 電子証明書
  3. タイムスタンプ

電子署名とは紙文書で行っていた「押印、サインなどと同様の効力」を電子文書上でも発揮できる役割があります。紙媒体と異なり、インターネット上で指定した相手のメールアドレスでアカウントを作成し、そのアカウント上で電子署名をすることで、「本人であること」と「署名をすること」の2つの証明となります。

タイムスタンプは「いつ」「何を」を証明するため、紙文書での「消印」と同義となります。

まとめると、下記のような仕組みとなっています。

  • 電子署名と電子証明書→「本人証明」と「非改ざん性」の証明の役割
  • タイムスタンプ→「存在証明」の証明の役割

電子契約を導入することで得られる6つメリット

電子契約を導入することで紙文書の代わりに電子契約で完結することができるようになりますが、具体的にはどのようなメリットが発生するのでしょうか?いくつか導入によるメリットを紹介します。

  1. 締結にかかる印紙税や送料などのコストを削減することができる
  2. 締結までにかかる時間を短縮することができる
  3. 紛失や漏洩のリスクが軽減し、会社としてのコンプライアンスを強化することができる
  4. 契約書の保管場所をの削減をすることができる
  5. 過去の契約書を探す時間を短縮できる
  6. 契約書の送付のために出社する必要がなくなる

締結にかかる印紙税や送料などのコストを削減することができる

紙文書の場合や契約書の締結に印紙税ややり取りの送料などのコストが発生します。電子契約の場合は、このようなコストが発生しないため、経費を削減することができます。1つ1つの経費は少額ですが、会社全体となると大きな費用を占めるため、外部取引きが多い企業の場合は大きなコストメリットが発生します。

締結までにかかる時間を短縮することができる

紙文書の場合は、送付や社内の回覧、修正やり取りなどを合わせるとかなりの時間を要します。早くても数週間で、長い場合と数ヶ月は契約締結までに時間がかかりますが、電子契約の場合は送付や修正のやり取り、社内の回覧などが全てインターネット上で完結するため、早ければ数日から1週間程度で契約を締結できることがほとんどです。

紛失や漏洩のリスクが軽減し、会社としてのコンプライアンスを強化することができる

電子契約の場合は紙文書で持ち歩くことはないため、紛失や漏洩などのリスクがありません。専用のサーバー内に自動で保存されますので、会社としてコンプライアンスの強化を図ることができます。

契約書の保管場所をの削減をすることができる

紙媒体の場合は、契約を管理するためにセキュリティ対策を設けた専用の部屋やスペースを確保しておく必要がありました。電子契約にすることで全てサーバー内に管理されるため、物理的な管理スペースを保持する必要はなくなりました。

過去の契約書を探す時間を短縮できる

電子契約の場合は専用のサーバー内に電子契約書類が保管されるため、これまでのように探す手間がなくなりました。取引会社や契約内容によってスピーディーに検索することができるようになりました。

契約書の送付のために出社する必要がなくなる

コロナ対策の一環として多くの企業がリモートワークを導入していましたが、どうしても紙文書の場合だと出社をして郵送対応を行う必要があります。社員の労働環境の改善としても電子契約のサービスを導入することは有効です。

電子契約を導入する上で、もう少しメリットについて詳しく知りたいという方は電子契約を導入するメリットを徹底解説!郵送や印紙税削減以外の効果とは?の記事にまとめていますので参考にしてみてください。

電子契約の証拠力

作成者本人による電子署名がされた電子契約については、押印した契約文書と同様に証拠力が認められます。

証拠力とは?

民事訴訟で、証拠がもつ信憑(しんぴょう)性の度合。証明力。証拠価値。

精選版 日本国語大辞典

民事訴訟で、証拠が裁判官の心証を左右しうる効果。「証拠能力」とは異なる。証明力。

デジタル大辞泉

民事訴訟法や電子署名法に証拠力として認められる旨の記載がされています。

電子契約のような電子データの場合にも同様の規定があり、作成者本人による電子署名がなされた電子契約については、押印した契約文書と同様の効力が認められます

(電子署名法第3条)

書面契約と電子契約との違い

書面契約と電子契約ではどのような項目で違いがあるのでしょうか?いくつか簡単にまとめてみました。

  1. 形式
  2. 証拠力(押印)
  3. 証拠力(本人性の担保)
  4. 証拠力(完全性の担保)
  5. 事務処理(送付)
  6. 事務処理(保管)
  7. 事務処理(印紙)

形式の違い

  • 書面契約:紙の書面
  • 電子契約:電子データ(PDF)

証拠力(押印)

  • 書面契約:印鑑と印影
  • 電子契約:電子署名・電子サイン

証拠力(本人性の担保)

  • 書面契約:印鑑証明書
  • 電子契約:電子証明書

証拠力(完全性の担保)

  • 書面契約:契印・割印
  • 電子契約:タイムスタンプ

事務処理(送付)

  • 書面契約:郵送
  • 電子契約:インターネット通信

事務処理(保管)

  • 書面契約:棚
  • 電子契約:サーバー

事務処理(印紙)

  • 書面契約:必要
  • 電子契約:不要

電子契約に関連する法律

電子契約には様々な法律で記載がされています。

  1. 電子帳簿保存法
  2. 電子署名法
  3. 印紙税法
  4. e-文書法

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法では「国税関係帳簿書類の電子保存を認めること」と「国税関係帳簿書類のスキャナによる電子保存を認めること」が記載されており、主に帳簿書類や決算関係書類、契約書や見積書などの書類を電子保存することができることが記されています。

電子署名法

電子契約に関する法的な効力について定められており、電子データでも紙文書の押印やサインと同じ効力を持てるようにされています。

印紙税法

印紙税法の第2条には、課税対象となる文書について規定がされていますが、その文書に電子契約が該当するかどうかまでは記載がされていません。しかし、内閣総理大臣による答弁や国税庁への照会での回答で「電子文書には印紙税が課税されない」と明言されています。

e-文書法

商法や税法などで紙媒体での保存が必要だった文書に対し、スキャナ保存した電子化データとしての保存が認められるように定められました。

電子契約に関する法律についてもっと詳しく知りたいという方は電子契約の効力はある?近年整備された契約に関する法律まとめ!の記事も参考にしてみてください。

電子契約導入時の注意点

電子契約は導入すると大きなメリットがありますが、一方で少なからずデメリットと呼べることもあります。導入前に理解を深めておきましょう。

契約する際には取引際の理解が必要

今となっては企業の大多数が電子契約を導入しているので、懸念は少なくなっていますが、まだ電子契約に対応していない企業も存在しています。会社として電子契約を進めたくても取引先に理解してもらわないと進めることができません。全てが電子契約で対応できないケースがあることを認識しておきましょう。

一部の書面では紙文書での締結が義務付けられている

今ではほとんどの契約書面は電子契約で対応することが可能ですが、一部の契約書については法律で紙媒体での締結が義務付けられています。そのため、電子契約を導入する前に、契約周りが問題ないかを念の為確認しておきましょう。

  • 定期借地契約借地借家法22条
  • 定期建物賃貸借契約借地借家法38条1項
  • 投資信託契約の約款投資信託及び投資法人に関する法律5条
  • 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務特定商品取引法4条etc

社内への周知や理解を得る

電子契約を導入することでこれまでの締結のフローを変更することになります。担当者によっては電子契約にすることで、相手方への説明やツールの利用を覚えるなど一時的な業務負荷につながることが想定されます。会社へ定着させるために、締結までのフローを整備して社内の理解を得られるようにしておきましょう。

代表的な電子契約のサービス

それでは電子契約について理解が深まってきたところで、どのようなサービスがあるのかをいくつか紹介します。どのサービスでも問題はありませんが、ツールの利用の仕方や取引先での扱いやすさなどを考慮して検討してみるのが良さそうです。

  1. クラウドサイン
  2. BtoBプラットフォーム
  3. WAN-Sign
  4. 電子印鑑GMOサイン
  5. ContractS CLM
  6. NINJA SIGN by freee
  7. DocuSign(ドキュサイン)
  8. Adobe Sign
  9. CONTRACTHUB@absonne
  10. jinjerサイン
  11. 契約大臣

こちらのサービスなどはTVCMでも大々的に放送しているところが多いので、一度はサービス名を耳にしたことがあるかもしれません。

電子契約サービスは年々と参入企業が多くなっており、実は30社以上も存在しています。こちら【厳選30社!】電子契約サービスはどこがオススメ?料金から口コミ評価まで徹底比較!でサービス比較も行っていますので、是非参考にしてみてください。

また、どの企業のシェアが高いのかなどについても気になるという方は電子契約サービスのシェアはどのくらい?トップシェアはやはりあの企業!も参考にしてみてください。

電子契約を導入している企業事例

電子契約は導入検討も含めると8割以上の企業が利用していますが、どのような企業で導入されているのでしょうか?いくつか事例をまとめてみました。

  1. ヤマト運輸
  2. 東急ハンズ
  3. ぐるなび
  4. 日本運輸
  5. 新生銀行グループ

ヤマト運輸

高い顧客満足度を誇るヤマト運輸のフルフィルメントサービス 裏側を支える「クラウドサイン Sales Automation」

<背景>

お客様のUX向上を目指し、電子契約導入を検討

<効果>

利用開始までのスピードが圧倒的に向上。利用事業者様から高い満足を実現

東急ハンズ

契約締結が1週間から1日に。クラウドサインで時間も手間もコストも削減に成功

<背景>

コロナをきっかけに紙の契約書の見直し

<効果>

契約まで1週間から1日へと大幅短縮の実現

ぐるなび

テレワークの状況下でも、契約の電子化でノンストップの事業活動

<背景>

スムーズなテレワークへの移行

<効果>

原則テレワークになっても混乱することなく移行が完了

日本運輸

日本通運、電子署名を活用した電子契約サービスを全社導入

<背景>

リモートワークやペーパーレス化を進めるにあたり、電子契約導入

<効果>

契約書の回収漏れや期限切れなどの発生を防止し、印紙や郵送によるコストの削減を実現

新生銀行グループ

社会インフラとして電子署名ツールを活用したペーパーレス化を推進

<背景>

ペーパーレスを勧めていたが、契約業務のほとんどを紙で処理していた

<効果>

現場でも戸惑いなくスムーズに活用を進めることができた

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は電子契約のサービスについて仕組みからこれまでの紙文書との違い、活用事例などについて紹介しました。今ではほとんどの企業で電子契約サービスの導入が進んでいますので、まだ利用していない企業でも活用が進んでいくことが想定されます。電子契約にすることで多くのメリットを得ることができますので、この機会に検討してみてはいかがでしょうか?

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